- 『新潟発R2023春・入門酒』より
- 取材・文=髙橋真理子 写真協力=吉乃川、キナセ、トライウェイ
新潟清酒の輸出は、コロナ禍の2019(令和元)年と20年に落ち込んだが、現在すでに回復傾向にあり、コロナ前の数量に追いつく勢いだ。酒蔵、海外店舗、バイヤーから、容器を中心にした輸出における新潟清酒の現状を聞いた。
容器の幅がある商品が好調
新潟清酒の海外輸出の統計が開始された1991(平成3)年では、総輸出量は10kl未満だったが、年々伸び、18(平成30)年には約2700klに。コロナ禍で約1700klまで落ち込んだが、21(令和3)年には約2600klまで回復。これからも伸びていくことが予想される。相手国は10年ほど前までは韓国がトップだったが、現在(21年データ)はアメリカが半数以上、韓国、香港・マカオ、シンガポールと続く。
輸出に力を入れている県内酒蔵の一つが長岡市の吉乃川(長岡市)だ。主にカナダ、アメリカ、台湾や香港などのアジア、オーストラリアへ輸出している。輸出担当の小野邦浩さんによれば、輸出している主な商品の中でも、国内の定番酒でもある「厳選辛口」の売れ行きがいいという。
「すっきりとした味わいも理由ですが、選ばれる大きな理由は一升瓶、四合瓶、300mlという容器の幅にあります。特にアメリカと台湾ではその傾向が強いですね」と説明する。180ml缶も少量ではあるが、輸出している。
2018年にフランスのパリにオープンした新潟のアンテナショップ「キナセ」では、現在県内約40蔵の80種類を販売している。
店長の伊藤洋子さんは「日本酒ビギナーの方はスパークリングや甘さのある日本酒を好むようですね。食前酒や贈り物として購入される方も多いようです」と語る。容器については四合瓶が多いが、それ以外のサイズでは「300ml、500ml、180~200mlの順になります。300mlはプレゼント用ですね。現在数量は少ないですが、小さいサイズのものは買いやすく試しやすいので、これから注目されていくと思います」と予想する。
吉乃川の小野さん、キナセの伊藤さんの共通意見としては、ラベルは純和風の漢字タイプのものが好まれているそうだ。
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小容量で普及にも一役
主に香港に向けて、新潟清酒を輸出しているトライウェイ代表の木村直人さんは、輸出コストやリサイクルの観点から、180mlや300ml瓶、パウチ、アルミボトル缶を中心に輸出している。180mlのアルミ缶もこれから輸出していきたいと考えているという。
香港のビジネススクールに留学していたときに、和食の盛り上がりに伴い、日本酒需要が拡大していくことを確信していた木村さん。香港の人たちの日本の歴史や伝統文化への興味の大きさにも着目。東京での商社勤務後、新潟へUターンして地域商社を起業。県内の酒蔵に声がけし、香港への輸出を始めた。
輸送コストやリサイクルの側面とともに、小容量だと手ごろな価格で販売できるので、香港でより多くの人に新潟の日本酒を試してもらい、そのおいしさを知ってもらえると思っています」と木村さん。海外では日本酒はかなり高価なものという印象だが、「例えば、一合瓶(180ml)の純米大吟醸酒なら1000円くらいから販売できるので、小容量が新潟清酒の敷居を下げることにつながるはずです」と期待する。
トライウェイが開催した香港でのプロモーションの様子
現地での反応も上々で、パウチタイプを複数種類購入して飲み比べを楽しんだり、キャンプ場へ酒器とともに購入して持ち込む人もいるという。アウトドアで楽しむ様子をアップする海外のユーチューバーも現れている。
YouTubeの一画面
海外へ旅立つ新潟清酒の容器の可能性は、これからますます広がっていきそうだ。
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